こころの休憩室(心理コラム)

感情には本物と偽物がある

感情には本物と偽物がある

感情は伝えた方がいいけれど……

人と心でつながるためには、感情表現はとても大切です。お互いの気持ちを理解できれば、安心ができるからです。

ただ、だからといって、気持ちを何でもぶつければいいかというと、ちょっと違います。コミュニケーションの方法を間違えると、関係はもっとこじれてしまいかねません。

では、どうすれば、上手に人とつながることができるのでしょうか。

本物の感情と偽物の感情

あまり知られていないことですが、感情には、本物と偽物があります。本物の感情を伝えると、人とつながることができますが、偽物の感情を伝えても、人とつながることはできません。

偽物の感情の代表的なものは、怒りです。

例えば、本当は怖いのに、それを怒りで表現する人っていますよね。テレビドラマなどで、娘の帰りが遅いのを父親が怒るという場面は、よく見かけると思います。

この時の父親の本音は、「娘に何かあったらどうしよう!?」と、本当は怖れを感じているわけです。それを「こんな時間まで何をしてたんだ!!」と怒りで表現してしまっています。その結果、父親と娘の心は、更に離れていってしまうんですね。

父親は「男がビビるなんてカッコ悪い」と考えているので、娘に怖れを伝える代わりに、叱る(怒る)ことで、格好をつけているわけです。恰好をつける代わりに「大切なお前に、万一のことがあったらと思うと、お父さんは居ても立ってもいられなかったよ」と本当の気持ちを伝えることができたら、きっと二人の関係は全く違うものになるでしょう。

このように、感情表現が不器用な人は、本物の感情ではなく、偽物の感情を使ってコミュニケーションを取りがちです。だから、気持ちがストレートに伝わらず、関係を上手に作れないんですね。

怒っているのに笑う人

昔、俳優の竹中直人さんが、まだ芸人だったとき「笑いながら怒る人」というネタがありました。
あれとは逆で、怒るべきときに笑ってしまう人がいます。例えば、人からバカにされたり、ひどいことをされているのに、なぜかヘラヘラと笑ってしまうわけです。

これは、怒りや怖れを笑いで誤魔化そうとしているわけですが、こういう感情表現をする人は、子供時代に怒ることを禁止されていた人が多いです。

「怒るのはよくないことだ」「いつも笑顔でいなさい」そうやって、怒りを表現してはいけないとしつけられると、怒りを表現することができなくなります。あるいは、親がケンカしたり、人が怒っているのを見て、「怒るのはダメだ」と自分で決めた人もいます。

こういった人の場合は、怒りを表現すると、関係性が変わることがよくあります。一方的に虐められて人が、怒りを表現することで、虐めがなくなったという例もたくさんあります。つまり、この場合は、怒りが本物の感情だったというわけですね。

苦手な人に本音を伝えてみる

本物の感情を伝えると、そこに安心感が生まれます。互いに、心が通い合い、つながりを感じることができます。

しかし、偽物の感情で伝えても、本当に分かって欲しい気持ちは分かってもらえません。すると、互いに不信感が残り、関係も縮まりません。

苦手な人との関係に困っていたら、自分が本物の感情を伝えているかを考えてみてください。きっと、当たり障りのないことしか言っていないと思います。

私は以前、苦手な人に「なんか○○さんって苦手なんだよね」と伝えたことがあります。そのときは、相手もびっくりしていましたが、それ以降、壁がなくなり、関係が良くなったことがあります。

本音を伝えるのは、怖いかもしれません。しかし、本音でつながらない関係なら、そもそもどうでもいい関係だったんだと、割り切ることも必要です。

近しい人にはもちろん、そうでない人にも、なるべく自分の本当の感情を伝えるようにしてみてください。

きっと、関係ががらっと変わることに驚かれると思いますよ。

関連記事

PAGE TOP