セミナー2日目、
初日よりも場の雰囲気に
少しだけ慣れてきました。
だんだん参加者同士でも
コミュニケーションを取るようになり
初日のぎこちない緊張感も解けて、
和やかな空気も出てきていました。
午後からは、
グループごとに分かれて劇を作るという
実習にも取り組みました。
どんなストーリーにするか、
設定、登場人物、配役を決め、
練習をしたりするうちに、
だんだんと仲間との連帯感も
出てきました。
しかし、私といえば相変わらず緊張していて
自分からは一言も発言はできず、
仲間の意見に笑顔で頷くのが精一杯でした。
この調子でセミナーが終わったら
楽しかっただけで、
何も得るものがないかもしれない……。
そんな心配がどこかにありながらも
とにかく自分にできることを
自分なりに精一杯やらなくてはと
気持ちを引き締めました。
そして、迎えた3日目、
私の人生を根底から揺るがす
ある事件が起きました。
「ステージシェア」という舞台の上に立って、
普段は誰にも話せないような話を
参加者全員の前でするという
実習中でのことです。
「勇気を出して話してください。
やった人にしか得られない体験ですよ」
トレーナーが全員の目を見て
挙手を促しました。
私は恥ずかしいので手は挙げず、
みんなのシェアを
大人しく聞くことにしました。
最初に勇気ある一人が手を挙げると、
それに続いて、我先にと
何人もの人がこぞって手を挙げ始めました。
恋人に浮気された話をする人、
仕事で大失敗した話をする人、
子供の頃の辛い思い出を話す人、
いろんな人たちが
ステージの上で悲喜こもごも
いろんな話をしています。
悲しい話の後には、
わーっと人が集まってきて
大変だったね、辛かったねと慰めながら
ハグをする姿も見られました。
そして、挙がる手が落ち着いてきた頃、
ある一人の男性がすっと静かに手を挙げました。
その男性は指名をされてステージに立つと
こんな話を始めたのです。
(続く)