ステージに立つとその男性は、
静かにこんな話を始めました。
僕は人よりも少し勉強ができるから
褒められることが多かった。
でも、褒められても、
内心はとても複雑な気持ちだった。
僕の母はとても厳しくて
特に勉強に口うるさかった。
テストで少しでもミスをすると
どうして間違えたのか、
なぜもっと考えなかったのかと
いつも鬼の形相で問い詰められた。
僕が勉強をする横で母が見ていて、
同じミスを繰り返したときは
「また間違ってる!」と
定規で手をビシッと叩かれることも
度々あった。
それが本当に嫌で嫌で、
でも母が怖くて反抗することもできず、
ずっと我慢をしていた。
今まで誰にも言えなかったけど、
僕は本当は自信がないし、
勉強なんか好きじゃないんだ。
彼は声を震わせながら、
子供のように泣きじゃくりました。
それを見ていた参加者たちは、
わーっと彼の元に駆け寄ると
彼を抱きしめながら、
「辛かったね」
「苦しかったね」と
慰めました。
私は、彼のそんな姿を見て、
「これは自分だ」と思ったのです。
私は彼のように勉強は得意ではないし、
むしろ劣等生の部類に入ります。
でも、彼を見ていていると、
まるで自分がそこにいるような
気がしたのです。
私の母はとても厳しく、
のんびりした私にイライラするのか、
毎日のように大声で怒鳴られていました。
母の逆鱗に触れたときは、
張り手が飛んでくることも
度々ありました。
テストは大抵ひどい点数だったので、
よくため息をつかれたし、
通知表が渡される学期末は、
これを母に見せなくてはいけないのかと思うと
憂鬱で仕方がありませんでした。
ミスをしたり、できないことがあると
「そんなこともできないの?」と
冷笑されることもありましたし、
弱音を少しでも吐くと、
「情けない……」と
ため息をつかれることもありました。
いつしか私は
母にがっかりされないように
できない自分や、弱い自分を
決して見せてはいけないと思うようになり、
完璧な自分でなくてはいけないと
思い込むようになりました。
でも、私の心の中はいつも、
(いつか本当の自分がバレるかもしれない)
(本当の自分を知られたら嫌われてしまう)
そんな怖れでいっぱいだったのです。
そして、人からどう見られているか
どう思われているかがいつも気になり、
過度に緊張するようになっていったのです。
(続く)